通常では考えられない手間暇をかけて作られ、(株)エーデルワイスファームが唯一無二と胸を張るロースハムの背景には家族の物語がありました。お話をうかがった製造管理担当の野崎徹専務取締役のお祖父様は、ノザキのコンビーフ創立者の五男。鰊漁で財を築いた小樽祝津の青山家の娘であるお祖母様と出会い、結婚。十勝で牧場を営んでいた1933(大正8)年当時から、1920年代の製法についてドイツで書かれた教本の翻訳をお手本に、自家用のハムやベーコンを作り始めました。
「50年以上家族のために作り続けていたものが札幌グランドホテルのシェフの目に留まり、『ぜひ製品化してほしい』という強い要請を受けて1986(昭和61)年に事業を立ち上げました」と野崎さん。「味や食感を阻害する増量剤、保湿剤、保存料や合成着色料などは一切使用せず、ドイツの製法に則って低塩でゆっくりじっくり寝かせる自然熟成を行います。スモークの際はチップではなく、香りがよいことでウィスキー樽などに用いられるオークや、カシワを2年間乾燥させた薪を使用し、炭火で燻すことで香りが柔らかく仕上がります」。ハムやベーコンづくりを学ぶために現会長であるお父様がドイツへ赴いたときには、野崎家の製法はすでにドイツでも失われていたそう。本場でも幻となった製法が、海を隔てた日本で新たな伝統を作り、今回の選定に至りました。
そしてもう一つ、重要なポイントとなるのがスモークの前に行う4週間の長期氷温熟成。「ドイツの製法に加え、独自に開発した工程を経ることで、肉の旨みが最大限に引き出され、特に脂身は舌の上でとろけるようなおいしさになります」と力を込めます。
「そのままでもおいしいですが、脂身が透き通るくらい軽く温めると、より一層とろける美味しさを感じていただけます」。サンドイッチや粒マスタード添えもおすすめだそう。商品を使ったメニューは同社経営のカフェでも味わうことができます。
2017年度認定