「北海道産の食材だけを使っていて、出産祝などでギフトし合える。そんなベビーフードが欲しかった」と話すのは、一児の現役ママである(株)Hokkaido Productsゼネラルマネージャー、大塚紗弓さん。その思いを掬い取ったのが、同社代表取締役、鹿毛伊織さんでした。二人は北海道医療大学の同級生。鹿毛さんは児童福祉に従事してきた経験から、北海道の誇る食文化を活用し、日本の子育て環境をよりよくしたいと考えていました。
二つの思いが重なって始まった製品開発。鹿毛さんは、野菜フレーク製造に30年以上の歴史を持つ滝上産業㈱の全面的な協力を得て、これまで世の中になかった「最高品質」の野菜フレークを新たに開発。デザインでは、業界の第一人者である寺島賢幸さんといった北海道の先駆者達の協力を得ながら製品づくりに奔走。一方、大塚さんは、仲間を募って試食会を繰り返し、製品の量目、デザインなどにママたちの声を反映させていきました。
2018(平成30)年9月、約半年間の奮闘の末、道産の新物野菜だけを使った「最高品質」のベビーフードが誕生。製品は、とうもろこし、にんじん、かぼちゃ、じゃがいも(インカのめざめ・男爵)の4種5品目。保存料、着色料などの添加物は不使用で安心して食べられ、お湯やミルクなど水分を加えると、水分量によってスープ状になったり、マッシュ状になったりする優れもの。水でも溶かせ、賞味期限も18か月間と長期保存できるので、地震などの災害時に使用されたり、備蓄品としても活用されています。「私達の目的は“販売”だけではありません。離乳食を通じて育児で感じていることなどを共感しあえる子育てサロンを自主開催しています」と大塚さん。さらに、社会福祉法人と連携しながら、ウェブサイト作成や、電話営業などに働きたいママなどを在宅ワークで雇用。国連の持続可能な開発目標(SDGs)推進にも取り組んでいます。
先人達、子ども達、親達…多くの思いを紡いで生まれた製品が、新たな思い、つながりをつくる。付加価値を生み続けるベビーフードが、北海道のものづくりの新しい在り方を示しています。
2019年度認定